「里親制度とは~全ての子どもに家庭という居場所を~」

「里親制度とは~全ての子どもに家庭という居場所を~」

2024年8月30日卓話要旨

「里親制度とは~全ての子どもに家庭という居場所を~」

社会福祉法人二葉保育園 二葉乳児院  副施設長 長田 淳子 氏

(早川幸男会員紹介)

 家族からの虐待による子どもの死亡は後を絶ちません。主な加害者は実母で4割にもなります。2022年度に全国の児童相談所が受けた虐待の相談は219,170件と過去最多。前年度より11,510件も増えています。しかし、これは分かった件数だけです。親からの虐待等による子どもの一時的な保護の件数は、2020年度に約13,000件、一時的に子どもと家族から離れて保護される子どもを含めれば5万人近い子どもたちが、常に公的な保護のもとで生活をしています。  

 東京都では、親の病気や虐待など、様々な理由で家族と暮らせない子どもが約4千人います。そのうち里親家庭で暮らしている子どもは僅か 1割です。ある中学生の子は両親が交通事故で亡くなり、一人になってしまいました。家族と生活できなくなるのは誰にでも起こり得ることなのです。  

 二葉乳児院では一番小さな子は生後1カ月に満たないお子さんです。お母さんに一度も抱かれたことのない子や自分の誕生日を知らない子もいます。

 0~18歳まで施設で生活している子どもたちは、家族のイメージを持つことができません。でも家族が欲しい、支えてくれる人が欲しい、帰る場所が欲しいと、急いで家族を作ったり、仕事に躓いたりすることも多くあります。支えてくれる人、応援してくれる大人が傍にいるのを一度でも知ることは、子どもの人生で心の支えになります。しかし、日本は施設での養育に頼り、里親家庭で生活している子どもは2割ほど。諸外国から見ても大きな差があり、欧米水準に約2万家庭も不足しています。千代田区ではこの10年間、養育家庭は0件。養子縁組もほぼ0件の状況が続いています。乳児院や児童養護施設、母子生活支援施設もありません。地域の子育て世帯がちょっと疲れた時に頼れる先がないと言えます。

 里親家庭は都道府県から認められた公的に養育する家庭です。国から里親手当や必要な生活費、医療費などが支給され、児童相談所などの専門的なサポートを受けられます。里親になるには住んでいる地域の児童相談所で手続きをし、研修や実習を経て里親登録することが必要です。養子縁組を目的とするのではなく、家族が子どもを育てることができない期間、養育する里親がいます。数日~数週間という短期もあります。家族と暮らすことが長期にわたって難しい場合は、18歳になって進学・就職等で自立するまでの間、養育することもあります。施設で生活している子どもと、週末や長期休み等に交流を持つ週末・季節里親などもあります。短期間でも、子どもたちにとってはかけがえのない、もう一つの安心安全基地になります。家族と離れて生活する子どもに必要なことは「愛されていいんだ。生まれてきて良かったんだ。生きていていいんだ。」ということです。周りの大人が言葉にしてちゃんと伝えてあげないと子どもたちは不安になり、自分の存在理由や存在価値を見失います。

 今すぐ何とかしないと、未来を自分自身で閉ざしてしまう子どもたちが増えることにもなります。全ての子どもに家庭という選択肢を与えて下さい。里親になって下さい。自分の家庭でもできるのか分からないという方は、個別の相談会やオンライン説明会も開催されています。里親登録に年齢制限はなく、単身で登録されている方もいます。要件は子どもを養育できる大人がいて、部屋があること。里親はちょっと難しいかもという皆さんは、ぜひ里親になる人を支えて下さい。 

 従業員さんが里親となるためボランティア休暇の取得を支えることや企業内保育所等の優先的活用、里親相談会への会場提供等で応援して下さい。普及啓発、例えばポスターを貼るとか「どこに貼ったらいいよ」「これちょっと分かり辛いよ」など是非教えて下さい。そして週末・季節里親の他、学習支援や施設にいる子どもたちとのボランティアもあります。自立へ向けた書籍配布、企業イベントへの招待、就職体験という応援もあります。詳細を知りたい方はどうぞご連絡下さい。遠方の方は私共がお繋ぎします。

 大きくなった子どもたちは、自分が家族を作るのを想像した時思い描くのは、あの時の里親さんや応援してくれた人たちだと言います。皆さんは想像できるでしょうか。幼い頃のエピソードを語ってくれる人が周りにいないことを。「赤ちゃんの時こうしてたよ。可愛かったよ。」と言ってくれる人がいない子どもたちがいます。その悲しみを共有するのも里親家族だと思います。どうぞご協力お願いします。