「ショパン国際ピアノコンクール」

「ショパン国際ピアノコンクール」

(株)サクライ楽器 代表取締役 (東京練馬中央RC) 
櫻井 健一 氏

今日はショパンコンクールのお話をさせて頂きます。音楽関係の仕事柄ピアノが好きなので、過去2回ショパンコンクールを鑑賞したことがあります。5年に1回の頻度でコンクールと受賞者コンサートが開催されますが、前回はコロナのため1年順延となり、2021年10月2日~23日に開催されました。例年、ショパンの命日10月17日の前後2週間に行われます。あまり知られていないポーランドですが、ピアノの世界では有名です。国をあげてコンクールを開催しているようなところもあり、とにかくショパンで、ショパン国際空港というものがあるほどです。

まずはコンクールの歴代優勝者を紹介させて頂きます。有名なのはポリーニやアルゲリッチ、それからツィメルマン、ダン・タイ・ソン、ブーニン等をご記憶の方がいらっしゃるかもしれません。最近では、中国人のユンディ・リ、韓国人のチョ・ソンジン、ロシア人のユリアンナ・アヴデーエワ、そして、直近ではカナダ人のブルース・リウが優勝しました。コンクールはワルシャワで開催されますが、ショパンの生家もワルシャワにあり、現在博物館となっています。

同じくワルシャワにある、聖十字架教会の柱にはショパンの心臓が眠っています。ショパンはワルシャワを出てパリに居住しましたが、革命などの影響で一度も帰国できず、そのままパリで亡くなります。「心臓だけはなんとか持ち帰ってくれ。」という遺言により、遺族が心臓だけ持ち帰り、壁に埋め込んだのだそうです。

コンクールは、まず予備予選があり5~600名位の応募があります。160名位に絞られた後、半分の80名、更に40名、20名、10名と絞り込まれて、本選を10名程で戦います。2021年の参加者で圧倒的に多かったのは中国で21名参加ましたが、本選に進んだのは1名。日本人も多くて14名参加。その内2名が本選に残って2位と4位、素晴らしいと思います。受賞者1位はブルース・リウ、2位が2名いましてイタリア人のガジェブと日本人の反田恭平。3位がスペイン人でガルシア・ガルシア。4位に日本から小林愛実、ポーランド人のクシュリク、イタリア人のアルメッリーニ、カナダ人のジュン・リ・ブイです。

私はピアノ屋ですから、どんなピアノを使っているかということに興味があります。コンクールでは4種類のピアノが使われていて、ドイツのスタインウェイ、日本のYAMAHAとKAWAI、それからイタリアのファツィオリがありました。演奏者が4台を事前に弾いて、本番に弾くピアノを選択します。スタインウェイを選ぶ人が圧倒的に多いです。予選で全部YAMAHAを選んで、本選だけスタインウェイを使った人もいました。

コンクールはフィルハーモニーホールというコンサート会場で行われます。会場自体1000人規模と広くはありませんが、ピアノのソロとしては聴きやすい会場です。2021年は少し遅くて7月でしたが、早い時期に予備予選を終えて、1次予選の段階から10月にこの会場で行われます。1次予選は20~30分位を1人で弾くという形です。ブルース・リウは、ファツィオリを使ってスケルツォの第4番を演奏しました。ガルシア・ガルシアはエチュード第2番を弾きました。

ここでは参加者が87名から44名に絞られました。2次予選の課題は30~40分の持ち時間に、バラード、ワルツ、ポロネーズ、その他、ショパンの楽曲でプログラムを組むというものです。ガジェブはKAWAIのピアノでバラードの2番を弾きました。ここで44名から23名に絞られ、続く3次予選はソナタか24のプレリュード、マズルカなどを選んで弾くことになっています。小林愛実は24のプレリュードを弾きました。これから伸びるのではないかと期待しています。

最後、本選はコンチェルトで行われます。ショパンのコンチェルトは2曲あり、第1番か第2番を選択でき、大体の方は第1番を選びます。今回はスタインウェイが2台のピアノを持ち込んだことが話題になりました。現地にもスタインウェイはあるのですが、持ち込んだピアノの方が多く使われたようです。 2位を受賞した反田恭平もスタインウェイを弾きました。彼はショパンコンクールで名を上げて、将来は自分で学校を造りたいという大きな夢を持っています。優秀なピアニストだけでは収まらないような方です。これからの彼の活躍は注目して良いのではないかと思っています。