「職業奉仕について」
3月24日卓話要旨
職業奉仕委員長 鈴木 一行 会員
ロータリークラブには活動の指針となる手続要覧があります。中でも独特の考え方だと思うのが「奉仕の理念」と「決議23-34」です。奉仕の理念とは「超我の奉仕」や「最もよく奉仕する者、最も多く報いられる」と書かれていますが、つまり「相手を思いやり、役に立つ事をしよう」ということだと、私は理解しています。
ロータリークラブの創始者はポール・ハリスというシカゴの弁護士です。当時、1900年前後のシカゴは非常に繁栄していたそうですが、自分の利益だけを考えて商売をしている人が多く、彼は商業倫理感に関して随分悩んだそうです。そこで、同じような考えを持つ4人を集めて会合をしました、これがロータリークラブの始まりです。今や120万人もの会員がいます。当初は一業種一人の会員制で、会員同士で原価取引をして利益を上げるなど、今とは随分違うこともあったようですが、ある会員が勧誘したドナルド・カーターという人物から「自分たちの利益だけを考え、社会的に何もしない団体に将来はない」と言って断られたことを聞いたハリスは、社会に役立つことをしようと決意します。
これをきっかけに、奉仕の概念が加わり、シカゴクラブ最初の奉仕として公衆便所設置運動を始めると、少しずつ広がっていったそうです。
ところが、親睦が一番であると言う人達と、奉仕をしなくてはならないという人達との対立が出てきます。そうした中、1908年にアーサー・フレデリック・シェルドンが入会してきます。「最もよく奉仕する者、最も多く報いられる」という経営理論を取り入れることを提言しました。奉仕の理念を学び、奉仕の心を育み、職業倫理を高めていこう、奉仕は個人がやればいいという、いわゆる理論提唱派です。それに対して、社会的弱者等に対する人道的な奉仕をクラブとして実践するべきだと考えたのがエドガー・アレンに代表されるような奉仕実践派です。アレンは身体障害者養護学校設立運動に積極的に取り組んでいましたが、理論派のシェルドンが実践派である彼の行動を非難し始めました。悩んだアレンが、創始者であり勧誘した人物でもあるポール・ハリスに手紙で思いを綴ったところ、シェルドンの考え方は間違っていないが、アレンが実践する奉仕も決してRCの考え方に反していないとして、ハリスの指示の下、両者を調和させる提案が書きあげられ、1923年セントルイス国際大会で決議されました。これが決議23-34です。どちらもやろうという玉虫色の折衷案にも見えますが、その後、団体としての奉仕には条件が加えられました。今でも理論派・実践派両方の考えがありますよね。理論派の人達も沢山いるし、クラブで奉仕というのもあります。
ここで少しロータリークラブとライオンズクラブの違いを説明致します。ロータリークラブは職業を通じた会員一人一人の奉仕を理念としていて、団体で奉仕すること、特に物を寄付するのは条件付きです。それに対し、1917年、RCの会員であったメルビン・ジョーンズが、「奉仕の活動に費用が発生するのは当然だ」という持論から別の組織を作ったのがライオンズクラブの成り立ちです。RCとは違い団体で奉仕、寄付行為による社会活動が中心です。
決議23-34の、現在のタイトルは「社会奉仕に関する1923年の声明」で、全ての奉仕活動に関する指針です。クラブ活動だけでなく、日頃の仕事から人のために奉仕しようということが書いてあります。どのような人を勧誘したら良いかという点では、RCの考え方を理解して実践しておられる方がロータリアンとしてふさわしいのではないか、と私は考えております。国際RCとの関係も述べられていますが、簡単に言うと、クラブの活動が最初にあり、その活動について基本的に国際RCは止める権利がないと言うふうに理解して頂ければ良いと思います。神田RCの歴代の会長が「親睦が何しろ一番」と言っていましたが、私も親睦を図りながら活動するのが一番良いと思います。
最後に、奉仕の理念を未来へ繋ぐということで「ロータリーは人生哲学」「超我の奉仕」を挙げましたが、要するに、一人一人が日常の仕事で他の人に対して奉仕をすること。これはRCだけの稀有な概念だと思います。これを実践行動し次世代に繋ぐことで価値ある未来を作ることができるのではないでしょうか。それが、職業奉仕であり、RCの一番の特徴だと考えています。