「これからの生き方・過ごし方~認知症・病気・障害から考える~」

「これからの生き方・過ごし方~認知症・病気・障害から考える~」

5月19日卓話要旨

「これからの生き方・過ごし方~認知症・病気・障害から考える~」

千代田区役所 障害福祉課   杉山 美幸 氏

(久保田 忠義会員紹介)

 本日は、認知症についてお話をさせていただきます。今後どういう生き方をすれば良いのか、自分の死に様ってどんな感じになるのかなと、少しでも考えていただければ有難いです。

 介護というのは、ある日、突然やってくるのはご存知でしょうか。ご自身やご家族が病気、認知症、事故に遭い障害が残ってしまう。人生は本当に色々なことが突然やってきます。数年前まで、65歳以上の要介護の原因1位は骨折や脳血管疾患でしたが、現在は認知症となり、2020年には600万人と言われていた認知症患者数は、2025年には700万人を超えるともと言われていますので、これまでに必ずどこかで認知症の方に会ったことがあるはすです。認知症の方は普通に暮らしている方が多く、少し挨拶しただけや見た目では分からないのです。「認知症と言われたら一巻の終わり、もう普通に暮らせなくなる」のではありません。認知症の方は沢山いるので、皆が一緒に地域で支えあって暮らしていく、そんな世の中になっていかなければいけないのかなと思います。

 認知症には定義があります。あるきっかけで脳が損傷を受けて、司令塔が不具合を起こし生活に支障をきたしてくる。これが6カ月以上続いていると認知症です。四大認知症の一つであるアルツハイマー病は物忘れを司る海馬にタンパク質のごみが溜って脳が委縮します。脳のどこに溜まるのか、支障があるのかによって病名が変わります。又、軽度認知症(MCI)に関しては、新しい治療薬がどんどん開発されて、ある程度症状を抑えられるとも言われているので、本当に早期発見が大事です。若年性認知は50代の男性が多く、遺伝が多いとも言われていますので、予防や早期発見で、できるだけ遅らせるような生活ができれば良いと思います。また働き盛りの50代の方々が若年性認知症により仕事を辞めざるを得なくなってしまう現状があり、その割合は90%以上です。

 日本は認知症に対する理解が浸透しておらず、今までのように仕事ができなくなってしまうといつの間にか働く場所が無くなり、辞めざるを得ない状況になっていることが多いですし、その人たちにご家族がいれば、生活が本当に大変になります。ですから、ロータリアンの皆様のような責任のある立場の方々が、自分の部下を守るような会社ができれば少しでも世の中が明るくなっていくのではないかと思います。

 脳はとても大切な臓器であるにも関わらず、なんかおかしいなと思っても受診する方がとても少ないです。胃が痛い時にすぐ病院を受診し治療するように、ご自身やご家族の脳に関しても、何か違和感があれば受診して早期発見・早期治療に繋げて頂きたいです。また、癌に関しましても日本は世界と比べ健診受診率が低いので、皆様のように発信力がある方に率先して予防や検診を促していただければ、病気の予防に対しても意識が高くなり、日本を変えていくことができるかなと思います。

 男性の健康寿命と平均寿命の差は7年程ですので、7年間は何らかの病気や認知症により治療や介護が必要な生活になると思います。皆様の最期がどのようになるのかは分かりません。なぜなら病気も認知症も選べないからです。ただ、病気に対する向き合い方やその生き方を選択することはできます。病気になっても、仲間とポジティブに生きていくことができれば、その生き様、死に様は変えていけると思います。

 自分の思い描いていた終末期を迎えられる人は、誰一人いないと思います。病院から延命の有無を問われた際、色々な親族が登場して親族が揉めている事も多いです。特にお金の問題はとても重要です。ご家族に前もってお話をされている方はスムーズに事が進みますので「縁起でもないこと」だとおっしゃらず、人生のクライマックスである最後をどう生きていくのか、延命をするのか、どこで死にたいのか、誰に看取ってもらいたいのか等を、ご自分の中で考えるだけではなく、言葉や文章にして残しておく、ご家族と話し合っておくということが、とても大事です。私の話がきっかけになれば嬉しく思います。

 本日、皆様のご様子を拝見し、一緒に食事をして話を楽しむロータリークラブは、脳が活性化し、介護予防にも認知症の予防にも最適な会だと感じました。皆さまのロータリークラブが、いつまでも活躍できるような場となり、益々発展できるような会となって頂ければ有り難く存じます。